届かなかったラヴレター
2015年クミコ賞~なつかし屋さん
切ない気持ちや感謝の気持ち、大好きだったあの人への想い・・・毎年、大切な人への思いを綴ったラヴレターを募集している「届かなかったラヴレター」。これまでご応募いただいた「届かなかったラヴレター」をご紹介します。
「近くの老人ホーム、予約30年待ちやって。そんなんもうあの世に行ってますわって断ってきたけど」そう言って父は笑った。父の話なんて、上の空で聞いていた。週末の度に実家へ行き、掃除・洗濯...。母亡き後、男の独り暮らしは予想以上に汚く、苛々していたから。
服だって「替えてね」と催促しなければ、いつまでも替えないのだ。それを私は、ただの面倒くさがりだと思っていた。でも、そうじゃなかった。近所の人から聞いてしまった。「娘に面倒を掛けたくない。洗濯物も減らすようにしてる」そう言っていたと。
変だよね。涙がポロポロ出たの。父さんのことなんて、そんなに大事にしてないのに...。ああ私に遠慮してたんだ。老人ホームも本気で見に行ったんだ。そう思ったら、切なくなって...。
父さん、私たち親子だよ。鬱陶しく思ったりもするけど、かけがえのない存在だよ。面と向かっては言えないから...来週、肉じゃがを作るね。一緒に食べようね。
-----なつかし屋より
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