届かなかったラヴレター
匿名
切ない気持ちや感謝の気持ち、大好きだったあの人への想い・・・毎年、大切な人への思いを綴ったラヴレターを募集している「届かなかったラヴレター」。これまでご応募いただいた「届かなかったラヴレター」をご紹介します。
あなたは網元の三男で同年。
仲良しでいつも一緒に遊んだ。
母はあなたの家で下働き。
母と私はあなたの家で夕飯を振舞われてから帰宅した。
浜辺で遊びながらあなたは
「大人になったら、嫁さんにしたい。いいかね？」
と訊ねた。吃驚したけれども黙って頷いた。
中卒後あなたは京都で大工修行することになった。
出発前日、畑で作業している私を訪ねてきた。
「一人前になって帰ってくる。
そして結婚しよう。待っていて......」
と言うや背を向けた。
背は泣いているようであった。
あなたは十年も帰らなかった。
便りもなかった。
十一年目の四月あなたから
「月末までには帰る。楽しみに待っていて」
と認められた初めての葉書が届いた。
文字は小躍りしているようであった。
頭の許しを得たらしい。
母があなたの家から飛ぶようにして帰宅。
あなたが足場から転落死したと告げた。
ぼうっとなって倒れた。
涙が涸れるまで泣いた。
あなたのご冥福を衷心よりお祈り申し上げます。
「届かなかったラヴレター」次回の募集についてはキャリア・マムサイトやメルマガでお知らせします。 過去の受賞作品はこちらでご覧いただけます。
