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届かなかったラヴレター

ケイ

切ない気持ちや感謝の気持ち、大好きだったあの人への想い・・・毎年、大切な人への思いを綴ったラヴレターを募集している「届かなかったラヴレター」。これまでご応募いただいた「届かなかったラヴレター」をご紹介します。


実家の石段を登ると
冬の暖かな日差しを受けた窓ガラスの向こうから、
私を手招きしている、やさしい父母の姿が見える。
縁側にある椅子に坐り、
時折小鳥が舞い降りるこの庭に、
父は、きまってパンクズを鳥達に与えていた。
父は兄二人にとっては、
こわい存在だったが戦後生まれ女一人の私には終生、
甘かった。私の前で怒った父の顔を見たことはない。
むしろ私の子供や長男夫婦の子供達には
何の分けへだてもなく、公平に接していた。
他人の悪口も父の口からきいたことはなかった。
人間長くやっていると世間の波風は荒く、
きっと父も、いいことばかりではなく嫌なこと、
辛いことも一杯あっただろうと思う。
けれど私達子供に、
それをおくびにも出したことはなかった。
いや父は、年を重ねるたびに、
性格的な重厚さを増し、
イブシ銀のように光輝き始めていた。
そんな最愛の父のやさしさをもらうばかりで
何一つ親孝行できなかった。
ゴメンネ。父さん。父さんのこと大好きだったよ。
世界一。ありがとう父さん。何倍もの感謝をこめて。

「届かなかったラヴレター」次回の募集についてはキャリア・マムサイトやメルマガでお知らせします。 過去の受賞作品はこちらでご覧いただけます。

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