届かなかったラヴレター
三木浩二
切ない気持ちや感謝の気持ち、大好きだったあの人への想い・・・毎年、大切な人への思いを綴ったラヴレターを募集している「届かなかったラヴレター」。これまでご応募いただいた「届かなかったラヴレター」をご紹介します。
初恋の人
君が不慮の事故で逝って38年になるね。
私が展覧会の案内状を出したことが、
結果的に君の死を早めたことになってしまった。
そのころ私は油絵を描いていた。
初めてのグループ展だったので、
どうしても君に観に来てほしかった。
その日に君にプロポーズするつもりだったので、
1日中会場で待ったけど君は来てくれなかった。
その日君は、
バイクで会場へ向かっていたけど、
道中で事故に遭ってしまった。
携帯電話の無い時代だった。
固定電話も
一般家庭にはあまり普及していなかった。
3日後に事故のことを知った私は
病院へ駆けつけたが、
君の意識が還っていなかった。
詫びきれないほど謝ったけど返答が無かった。
2日後、君は帰らぬ人となってしまった。
そのときの日記を繰ってみた。
君宛の短かい恋文が記されていたよ。
あの日は病院の山茶花が咲き始めて
粉雪が舞っていたね。
今夜も外は冷えそうだ。
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