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熱血教育コラム 指南の部屋

受かるはずの子が失敗してしまうパターン ~我が子を悲劇の主役にしないために~

子どもたちにとって「学ぶ」とはなにか。カリスマ講師・ごとう先生が「教育」について、わかりやすくママたちに語ります。

後藤 武士 先生:1967年(昭和42年)岐阜県生まれ。青山学院大学法学部卒。日本全国授業ライブ「GTP」主宰として、北海道より沖縄・石垣島まで、児童、生徒、父母、講師、教師、会社員を対象に講演。また新進気鋭の若手教育評論家、最強教育指南役としても活躍中。 ⇒オフィシャルサイト ⇒後藤武士先生 著書一覧

~後藤先生メッセージ~
実現可能で、子どもの性格・適正にあった経験的な裏付けをもった学習法を指導したいと思っています。ときには厳しいことも申し上げますが、すでにご定評いただいている救いのあるアドバイスを心がけます。夢を妄想としてしまうのではなく、 数年後の姿とできるよう、一緒にがんばりましょう。

20161019.jpg 今年も受験シーズンが近づいてきた。特にペーパーテストを主体とする受験というのは世に存在する競争の中では比較的フェアなもので、就職活動やスポーツ芸術でのレギュラーやベンチ入りやキャスト争いなどに比較して運の左右する要素が小さい。功罪の罪の部分ばかりがクローズアップされがちなペーパーテストだが、実は功の部分も大きい。採点者による恣意的な評価が難しい分だけペーパーテストは対策がしやすく、また努力と実力が結果に反映されやすい
 そんな受験ゆえに、本来ならば十分な実力を持った子が不合格の憂き目に会うということはあまりない。が、物事にはなんでも例外がある。しかし例外にもまた原因と理由は存在する。今回は少し気が早いが、間際では生々しすぎて伝えにくい、実力が十分なのになぜか失敗してしまう子の失敗原因についてお話したい。

失敗原因1 併願をしない

 「そこしか入る気ないから」「他は受かっても行かせる気はありません」そんな親子が毎年一定数存在する。気持ちは大いにわかるのだが、受験において、これはマイナスでしかない。むしろ「他には行かせる気がない」「第一志望以外は考えていない」からこそ併願は不可欠なのだ。
 第一志望しかない、ということは絶対に失敗は許されないということに他ならない。ならば、第一志望の受験には万全の状態で臨まなければならない。したがって準備が大切なのだが、3年間挑戦の機会がある部活などと異なり受験の機会は基本一度しかない。その一度は本番なので、その環境に慣れようと思えば模擬的な環境を作って経験を積むしかない。その模擬的な環境としてもっとも適切なのが併願校の受験なのだ。範囲の決まっていないテスト、試験監督の顔も試験会場も初めて入る場所、隣が誰になるかわからない、こうした環境で受験できる機会というのはそう多くはない。塾主催の模試、英検、漢検、業者テスト、いずれもいい線を行ってはいるのだが、会場でのアウェイ感と孤独感に欠ける。これらは比較的知りあいがまわりの席で受験する確率が高いからだ。本番ならではの緊張感と雰囲気を体験しておこうと思ったら、併願校の受験が一番。なにせその学校を第一志望にしている子たちにとっては本番であり、模試などとは重みも雰囲気も違うのだから。ここで経験しておけば自分自身の第一志望の本番には随分平常心に近い形で臨むことができる。
 また併願の試験に合格していれば精神的にもよい意味でのゆとりができる。同じ学校を受験するライバルたちが、すでにいざとなれば行ける学校があるのに、自分だけが失敗を許されない状況など、とても平常心ではいられないもの。よほど日程的に無理があり第一志望の試験に負担をかけそうな場合は別だが、そうでなければ併願は必要不可欠であり併願校の受験こそが第一志望の合格を決めるといっても過言ではないだろう。

失敗原因2 間際での転塾・退塾

 これも自信を持った親と子によくある例。早いケースだと冬休み前、遅い場合は受験の当月直前に塾を替える、あるいはやめるというパターン。特に昨今は実績ほしさに大手塾が直前の模試の好成績や高内申点を条件に無料で受け入れるキャンペーンなどをやっていることも少なくなく、変なところで節約意識を持ってしまったお母さん、まだ受験もしていないのに、ツイッターなどで得た余計な情報に気が動転し、めでたく合格した後にいわゆる「ぼっち」や少数派になることを杞憂する子どもなどが、これをやってしまう。
 これまた気持ちはわかる。中学受験だと2月、高校受験だと3月、どちらも初旬や中旬。とすると当月の下旬にはもう塾は用がない存在となっている。にも関わらず、月謝などはそのままだったり授業時間数が臨時に増える分だけ割増になっていたりする。どうせ直前は自分が苦手なところを見直すだけだし、独学でできる、いや独学の方がよいだろうと。無理な合理化で節約を理論づけてしまい退塾、あるいは無料のところへ転塾させてしまうのだ。
 これは絶対にやってはいけない。受験の直前にとんでもない価格設定をしてくるような悪い塾は別だが、そうでなければ当月こそ在籍しておきたい。なぜなら直前は情緒も不安定になりがちで、過去問などを見直してもこういうときに限って、解き方が思い出せなかったり、不安なタイプの問題が目についてしまったりするもの。そんなときに一番頼れるのは慣れ親しんだ塾であり講師のはず。塾もこの時期はたいてい質問や不安解消の話し相手などにフルタイムで対応しているもの。また受験間際のたまり場、最後の情報交換の場としてもキープしておきたい場所。退塾したら一番必要なときに一番必要な人も場所も使えない。転塾だって同じで、つい少し前にやってきたばかりの新参者にかまってくれる講師もいなければ、システムもわからないからサービスをフルに活かすことだってできやしない。入学後の仲間づくりの目的も、この切羽詰まって殺気立った時期にやるのは容易ではない。むしろ「なんだ、今ごろノコノコ入ってきて」と敵意さえ持たれてしまうこともある。
 どうしても退塾あるいは転塾したいのなら、遅くとも冬前にやっておくべきだろう。冬休み前なら講習で密度の濃い時間を共に過ごすことでアウェイをホームにすることもできる。経済状態が楽でないのはわかる。が、節約するのならある程度長い期間に渡ってなすべきで、直前の一ヶ月分だけ浮かせたところでたかが知れている。失うもののほうが大きいだろう。

失敗原因3 その他

 この他、風邪や腹痛など健康状態の問題、家庭内の不和など精神面に影響をおよぼす問題などが合格の大敵としてあげられる。前者においては、運次第でどうにもならない部分もあるが、ゆとりをもって準備と行動をすることと、直前には普段とあまり異なった行動を取らないことで、ある程度危険を回避できる。明日は本番だからと普段食べないような豪華食材を食したり、スタミナ食やドリンク剤などを提供したりすることは避けたい。後者においては、とにかく間際になってごちゃごちゃ言わないこと。言うのならもっと早い時期に。特に普段、その子の成績や進路など気にも止めていなかった父親または母親、あるいは祖父母やおじおばの介入には要注意。今まで放置していた人ほど直前にぶつぶつ口をはさむもの。相手のあることなので完全に避けることは難しいが、少なくとも自分が矢面に立ち、「あなたは心配しなくていいから」と本人をさっさと部屋に行かせたり寝かせたりしてしまうことで、守ってやりたいところだ。
 ここまで書いていて改めて気がついた。結局やりなれないことをする、間際になって特別なことをするというのが失敗するパターンに共通した要素に思える。裏を返せば、生活習慣を改めるなら今、志望校を変更するなら今、無理をするなら今、話し合うなら今、塾や家庭教師を見直すあるいは始めるなら今、ということだろう。うまくいっているときはいじってはいけない。これは勝利の鉄則のひとつなのだから

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