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熱血教育コラム 指南の部屋

申請書はイラン? いや、いるだろ!

子どもたちにとって「学ぶ」とはなにか。カリスマ講師・ごとう先生が「教育」について、わかりやすくママたちに語ります。

後藤 武士 先生:1967年(昭和42年)岐阜県生まれ。青山学院大学法学部卒。日本全国授業ライブ「GTP」主宰として、北海道より沖縄・石垣島まで、児童、生徒、父母、講師、教師、会社員を対象に講演。また新進気鋭の若手教育評論家、最強教育指南役としても活躍中。 ⇒オフィシャルサイト ⇒後藤武士先生 著書一覧

~後藤先生メッセージ~
実現可能で、子どもの性格・適正にあった経験的な裏付けをもった学習法を指導したいと思っています。ときには厳しいことも申し上げますが、すでにご定評いただいている救いのあるアドバイスを心がけます。夢を妄想としてしまうのではなく、 数年後の姿とできるよう、一緒にがんばりましょう。

日本で持たれている印象とは異なるイラン

20150715.jpg 先日、イランを訪れた。うわさには聞いていたが、日本で持たれている印象と大きく異なり、シンガポールや台湾に匹敵するほど治安がよく、首都テヘランは大都会で、人々は日本人に非常に好意的だった。報道というものは結局メディアの意向というフィルターを通した結果でしかないということを実感させられた。もちろん不便もあった。たとえば、通貨のわかりにくさや街中のトイレ事情、飲酒が禁じられていること。それからカードが使えないこと。カードに関してはアメリカと国交断絶状態にあることに端を発している。だがそれでも市中の消費活動は先進国のそれだった。文字通り八方ふさがりであっても、こんな風に治安も安定し相応の経済発展ができることに驚かされた。もっともそんな国はイランだけではない。昨年アメリカとついに国交回復にいたった中米のキューバ(ただしトランプはこれを見直すと言っているが)しかり、ある意味アメリカ以上に恐ろしい中華人民共和国という大国ににらまれつつ順調な経済発展をとげた台湾しかり。孤立はとてつもない絶望感をあたえるものであり自ら積極的に望むべきものではないが、不幸にしてそういう状況に陥ってしまっても希望の道が閉ざされたわけではないということを、イラン、キューバ、台湾などの歴史は教えてくれている。

アメリカへの渡航のためにビザを申請

 そうはいってもある程度の不便はさけられない。かくいう私もイランへの渡航歴を持ってしまったことで、ESTA(インターネット利用に寄る電子渡航認証システム、ビザ免除プログラムの一貫)の利用ができなくなり、アメリカへの渡航に際して非移民ビザが必要になってしまった。発給に時間がかかると聞き、比較的スケジュールに余裕があるうちにと新刊の校了を終えて、さっそく申請におよんだのだが、サイトには「1時間半ほど要するので随時SAVEすること」とある。さすがにそこまではかからないだろうと思いきや、やってみたらしっかり1時間半かかってしまった。私はどうにかやり終えたけれど、途中で嫌気がさしてあきらめてしまう人も少なくないだろうなと、その時だった。そうか、これだ! と。これって目立たないけど大切なスキルだよなと。

申請書を作成する機会は多い

 もったいぶってしまったが、そのスキルとは申請書の作成スキルのこと。これ、学校ではまず習わない。それどころか数少ない申請書作成のチャンスも、間違いがあったら大変だからと自筆欄以外のところは親に書かせたり、あらかじめ印字されてしまっていたりする。できる人にはどうってことのないことだが、私自身はできない人なのでよくわかる。申請書の作成が面倒なばかりにどれだけ多くのチャンスを見逃し、支給されるお金を辞退してきたことか。そう、ご存知のように実社会では一事が万事申請書類作成から始まる。入学願書はもちろん英検や漢検の申込書、推薦の申請書など、学生のステップアップの最初には常に申請書記入がついてまわる。条件を読んだ上で適切な形で回答することは言うにおよばず、文字の丁寧さ、正確さ(最近はネット利用のケースも多いが)添付書類をかき集めてくる体力と労力、それぞれにいちいち待たされることに対する我慢強さ。大げさと言えば大げさだが、こうしたことが苦手な若者は少なくない。

早いうちから慣れておこう

 かつて会社を経営していたときのこと。社労士がやってきて「これこれこういう申請をすればこれだけのお金が支給されますよ」と何度アドバイスしてくれたことか。しかしダメ経営者の私は、書類作成の煩雑さ(まる投げしても結構作業が残る)に辟易し、そんなもん稼いだほうが早いと、せっかく御上が私のような下々の者にくださるという補助金に見向きもしなかった。よくよく考えれば、のべ数時間の我慢で数万円から時には数十万円(場合によっては、さらに多く)いただけたというのに、ああ、なんともったいないことを。個人としてもそうだ。私はオーディションや文学賞に応募したことがほぼ皆無なのだが、これもまた書類作成嫌いゆえのこと。そういえば自らも文芸賞を受賞している職業作家である小説学校の先生はこうおっしゃっていた。「どんなにとんでもない文才があっても応募できなきゃ世に出ることはできない」と。決められた書式で自分に関するアレコレを記載し(これがまた自意識過剰には結構つらい作業なのだ)決められた応募形式にまとめ、決められた日時までに送付する。もしかして文才のある人ほど苦手なジャンルなのかもしれない。
 うむ、やはり書類作成能力は学校では教えてくれない重要なスキルのひとつと言っていいだろう。しかもそれはステップアップにことごとくついてまわり将来に直結する。こうした雑事から逃れて、バックパッカーになって気ままに世界一周しようとしても、国境ごとに出国審査書と入国審査書の記載はついてまわるし(しかも日本語ではない!)誰も書類作成からは逃れられない。だったら早いうちに慣れておいたほうがいい
 というわけで、今まで全部書いてあげていた保護者の皆さん、一度本人に書かせてみたらどうだろう。もちろん監督してないと何を書くかわかったものではないので、指導のもとでという条件がつくけれど。
 ああ、誰か、ここから先の人生ずっと、ぼくの代わりに書類の一切を書いてはくれぬものだろうか、などと思いながら駄文を締めくくるのだった。

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