在宅ワークをするにあたって知っておきたい「トラブルシューティング」についての問題です。
テキストを読んでチャレンジしてください。
例えば、こんな問題が出題されます。(制限時間20分)
厚生労働省が行った「平成23年度家内労働等実態調査」によると、発注事業者側の初回契約方法は「書面」が50.8%(「契約書方式」30.4%、「メモ程度」8.5%、「電子メール」14.3%)との数字が出ており、「口頭」が32.0%となっています。しっかりと書面で契約を交わしているのが約3割しかありません。また、在宅ワーカーとのトラブルが「ほとんどない」と答えた発注事業者は75.7%で、「たまにある」の23.7%を合わせても、発注者側からみたトラブルは多くはないようです。トラブルの内容としては「仕事の出来具合」「仕事の納期」が多くなっています。
しかし、上記の数字は発注者側の意見であり、契約を請け負うという弱い立場の在宅ワーカーが同じように感じているとは限らないのが現実かもしれません。いくら注意をしていたとしても、発注者との間にトラブルが発生してしまうことがあります。社員、アルバイトなどの雇用とは違い、在宅ワークは自分で請求しない限り、報酬は支払われません。仕事の完了とは、報酬が自分の口座に正しく振り込まれた時ということを忘れないのが大切です。
仕事の内容、支払い金額については契約書や発注請書などの書面で残すように心がけましょう。トラブル発生時だけでなく、回避にもおおいに役立ちます。基本中の基本ですが、契約書を作成して契約内容を明確にしましょう。書面にすることで権利関係が明確になり、書面があることにより、交渉を進めやすくなります。裁判の際は有力な証拠として権利関係の立証に役立ちます。在宅ワーカー側から発注者に契約書の交付を求めてもよいでしょう。「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」では、在宅ワーク用の契約書の参考例が提示されているので、どんどん活用しましょう。
在宅ワークに関わるトラブルは少額な案件も多いため、費用をかけて弁護士などの専門家に相談することは難しい場合が多く見受けられます。また、外出するのが難しいからこそ在宅ワークを選んだのに、トラブルのための諸手続きで外出したり、時間を拘束されてしまうのは大きな痛手です。トラブルについては何が問題だったのか原因を突き止め、対応内容とともに記録しておきましょう。請負業務量や業務体制の見直しなどが必要かどうかも検討して下さい。今後、同様のトラブルが起きないようにミスから学ぶ姿勢が大切です。
在宅ワークのトラブルで起こりがちな報酬の不払いを防ぐため、仕事を受注した際に必ず確認しておく事項は、以下の通りです。
- 単価はいくらか、相場と照らし合わせて適当であるか
- 休日就業や急ぎの場合は特急料金が上乗せされるのか
- 納品日から何日後に入金されるのか
- 支払期日の設定は発注者によって異なるため必ず確認
銀行や郵便局の口座振込みか(その場合、振込み手数料はどちらが負担するのか)、現金支払いなのか
仕事にかかる資料の購入費や郵送および宅配便代、CDなどの外部記憶メディア代、打ち合わせの時の交通費、通信費用、仕事に必要な機器、バージョンアップ代はどちらが負担するのか
不完全だった部分について報酬から差し引かれるのか、その引かれる割合はどのくらいなのか
- 納期が遅れた責任を求められる場合はその範囲について、報酬から差し引かれるのか、引かれる割合はどのくらいなのか
不払いを予防するためには、契約を結ぶ前から取引先に関する情報を集めるよう心掛けましょう。取引継続中も常に相手方の経営状態や資産状況を意識して下さい。チェックすべきポイントとしては、業歴、業績の推移、経営主体の変動、従業員の勤務態度、離職状況などが挙げられます。
相手がうっかりして支払期限を忘れている場合もありえます。まずは請求書を再送し、メールや電話などで連絡を取ってみましょう。いきなり内容証明郵便(※)を送るのは悪印象を与えますので、好ましくありません。
文書やFAXなどを使って、文書に残す形で交渉を行います。クレームに対しては、誠意をもって誤解を解く、理由がある場合は説明する(言い訳はしません)、指摘された問題点を直すなど柔軟な対応を心がけます。それでも解決しない場合は、内容証明郵便による督促を行います。
内容証明郵便による督促をします。契約の解除などの意思を伝えた事実や日時を証明する証拠となります。「不払いに対する法的アクションを起こします」という意思表示にもなります。
※内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰に差し出したものかを郵便局が証明するものです。差出人の名前の後に捺印、枚数が2枚以上になる時は契印も必要です。また、同文の書面を3通作成することが必要になります。内容証明郵便は、一般の郵便局では受け付けないので、集配郵便局または地方郵便局長指定の郵便局に出向く必要があります。
「在宅ワークで簡単に高収入!」、「検定合格で高額報酬の仕事を保証!」などとうたった在宅ワーク悪徳商法もあとを絶ちません。高額な通信教材を購入させ、試験に合格したら仕事を与えるという約束をするが合格をさせず仕事を与えない、保証金や登録料などの名目で在宅ワーカーに事前支払いを求めるが、仕事は斡旋しないなどの多種多様のトラブル報告があります。事前に入会金、保証金、機器購入費用など、不可解な費用を支払わせようとする業者は、ほとんどが「内職商法」と呼ばれる悪徳業者です。提示内容が少しでも納得いかない場合は、契約を見送りましょう。また、資料請求や無料電話で問い合わせをすることで、個人情報が悪徳業者に渡ってしまう危険性が高まりますので、安易にコンタクトしないようにしましょう。
内職商法(事前に高額の商材などを買わされたようなケース)については、2001年6月より特定商取引法の規制対象となり、20日間のクーリングオフ期間が設けられています。たとえば訪問販売で購入契約した場合は、「特定商取引法」で指定した商品やサービスについて、8日間以内(マルチ商法では20日間以内)に書面で申込みの撤回、または契約の解除通知をすることで、無条件で売買を白紙に戻すことができます。これを「クーリングオフ(冷却期間を置く)制度」といいます。電話勧誘販売の場合も、契約書類の受け取り日から8日間は無条件で申込みの撤回ができます。
トラブルがどうしても解決しない場合は、トラブルの内容に応じて法制度や相談機関・団体などを無料で紹介している法テラス(日本司法支援センター、http://www.houterasu.or.jp/ 電話0570-078374=おなやみなし)への相談を検討してみましょう。相談の際には、契約書やこれまでに交わしたメールなど、今までの経緯が分かる資料を忘れずに用意しておきましょう。
パソコンと電子メールは在宅ワーカーにとって、いわばライフラインです。発注者と在宅ワーカーを結ぶ、なくてはならない仕事道具です。もし、指定された納品時間にパソコンやメールのトラブルが起きてしまったら、納品できないことによって発注者に迷惑をかけて信用を落とすだけでなく、以降の仕事の受注にも悪影響を及ぼします。
そんなトラブルに備えて、可能であればバックアップ用のパソコンと複数のメールアドレスを持つことをおすすめします。できれば、仕事とプライベート用のパソコンやメールアドレスをそれぞれ用意することで、故障などのトラブルに対処ができるようにしておくと安心です。経済的な理由で、複数のプロバイダと契約できないという人は、フリーメールを使うという方法も考えられます。ただし、緊急時に限り使用し、通常はプロバイダメールを使うようにして下さい。
パソコンのトラブルなど、緊急の際にはどのような連絡方法をとるかは事前に想定しておくと万が一の際に安心です。携帯電話(スマートフォン)、タブレットなどで代用できることもありますので、所持している人はメールの転送サービスや、タブレットで業務用のファイルが使用できるかなどをチェックしておくとよいでしょう。
パソコンが起動しない時、考えられるケースは、複数のソフトを使っていて、ソフト同士がクラッシュしてしまった、ハードそのものが故障してしまった、ハードの容量を上回る作業をしてしまった、ウイルスに感染してしまったなどが考えられます。このような時の対処法(修理先、問い合わせ先など)は、パソコンが起動しなくても分かるようにしておきましょう。
また、データを保存していなければ、パソコンが故障した場合、全部無駄になってしまう危険性があります。業務中のファイルに関しては、パソコンのハードディスクだけで保存せず、必ず外付けハードディスクや外部記憶メディアなどでバックアップをこまめに取りましょう。1日1回と言わず、作業を中断する時や午前、午後、夜間など、習慣付けて保存するようにしましょう。
突然、Eメールが送受信できなくなった場合は、契約しているプロバイダがメンテナンス中、プロバイダ自体の通信環境に何らかのトラブルの発生などが考えられます。その他、メールボックスに保存しているメールの容量の契約容量オーバー、送受信するメールの容量(添付データ含む)の超過、モデムの異常、有線接続の場合、ケーブル接続の異常なども想定できます。突発的なメール送受信トラブルの際の問い合わせ先、基本的な問題解決法なども把握しておきましょう。
ご家族のいる人は、子どもを含む家族の病気やケガなどのトラブル時の対応も考慮しておきましょう。特に乳幼児や高齢者が家族にいる場合は、不測の事態が起きる可能性が高いので、事前にどうするか決めておく必要があります。
育児や介護をしながら在宅ワークをするのであれば、万が一の時のパートナーや家族の協力と理解が不可欠です。どうしても納期に間に合わないという場合は、パートナーや家族に相談して、介護や育児を手伝ってもらえるよう、頼める状況にしておきましょう。もし、身近に信頼がおける友人がいれば、時間限定で頼むこともできるかもしれません。この場合は、日頃のお付き合いがモノを言います。困った時に「お互い様」と言える関係があるのが前提です。
家族や友人、または託児所他自治体などのサポートも受けられない時は、早急に発注者に直接相談してみましょう。状況によっては、納期や担当を変更してもらえるかもしれません。仕事を抱え込んだまま連絡もせず、最終的に納期に間に合わなかったら、信用を失くすだけです。それよりも、できるだけ速やかに相談し、できないことを伝える勇気を持つことも必要です。もちろん、トラブルを報告し、納期の延長などをお願いする際は、まずは謝罪することが鉄則です。そして変更を受け入れてもらった際には、御礼を忘れてはなりません。仕事を辞退することになっても、同様です。そのためにも日頃から発注者との信頼関係を築いておくことが大切です。