母へ あなたはいつも、わたしたち家族の真ん中に居た。
あなたが悲しめば家中が沈み、あなたが笑えばみんなが笑った。
あなたが帰らぬ人となった時、私は今まで当たり前に手にしていた全ての物を失っていく様な気分になった。
家族が食卓に着くときも、そこにあなたの料理が並ぶことはなく話を聞いてくれるあなたが居ない。
けれど、あなたが居た頃にはなかった習慣が1つ生まれた。
「今日わたしが買ってくるね。」 あなたに供える花である。
とても好きなのに、アレルギーで家に飾ることができなかった母のための花。
枯れると誰となく「今日はわたしが。」と買いに出る。
今日もこの家にあなたは居ない。
けれど、食卓にはあなたの味をお手本に作られた料理が並び、あなたを思って選ばれた花が、あなたの笑顔に似た明るさで咲いています。
お母さんが亡くなって、生まれた習慣。生前はアレルギーのために家に飾ることができなかったお花を家族がかわるがわる供える。失うばかりではなくて、新しい色、新しい香りがお母さんの不在をやさしく満たす、花咲くラヴレター。こんな風に家族に想い続けられるお母さんは、なんて幸せなんだろう。母の一人として、胸を熱くして読みました。
脚本家。テレビ作品に朝ドラ「てっぱん」「昔話法廷」「おじゃる丸」(以上NHK)ほか。映画作品に『パコダテ人』『子ぎつねヘレン』『ぼくとママの黄色い自転車』ほか。故郷・堺を舞台にした映画『嘘八百』が2018年公開予定。広告代理店コピーライター時代の経験をふくらませた小説「ブレストガール!〜女子高生の戦略会議」など書籍もちょこちょこと。
(http://www.masakoimai.com)