あなたに伝わることのない想いをこうして綴るのは最後にします。
あなたと初めて話したのはある晴れた朝でした。
そっと近寄った私におはようと言ったあなた。
あの時にもし戻れるなら私は私に何と言おうかな。
憧れの気持ちだと思っていたのに気づいたら私はあなたに夢中でした。
あなたに会うとわたあめを食べているような気持ちになって、
あなたと話すと湯たんぽを抱えているような気分になって。
あなたの愛した日常は、私が憎んだ日常で。
あなたが手放した悲しみは、私が受け入れた痛みで。
あなたがくれた優しさは、私が抱きしめた苦しみで。
そんなことを考えながら、やっぱりあなたに会いたくて。
ずるい私はあなたに甘えていたんだね。これが最後のわがまま。
この手紙を書き終える時、私のあなたへの気持ちも終わります。
私はあなたが好きでした。苦しいくらいに好きでした。
あなたに愛する人がいたとしても。私はあなたが好きでした。
とてもきれいな作品、という印象を受けました。自分と相手の心の動きが、いろんな角度から見て取れますよね。決してハッピーエンドの恋ではないのですが、
透明な氷砂糖のような、口の中に入れるととけてなくなってしまうような、そんな甘くないけど、せつないほろ苦い恋。青春の初恋とも、叶わない人のいる忍ぶ恋ともとれる、いろんな形で想像できる、プリズムのような広がりを感じました。ハッピーエンドでなくても、恋した時間は確かにそこにあった。そんな素敵な作品です。
今年も、たくさんの方から応募をいただき、ありがとうございました。
学校の授業で取り上げていただいたのでしょうか。複数の学校の先生から、生徒のみなさんの素敵な作品をお送りいただきました。とても嬉しかったです。
最終選考まで、色々と意見もまとまらず、それぞれの審査員が、それぞれの視点で、好きな作品を挙げることになりましたが、今年は重なることもなく、各作品ともに、素敵なエッセンスを発信できたのではないかと思っています。
SNSのように、顔文字やひとことで伝える、笑ってごまかせるメッセージとは違って、一文字ずつ悩んで逡巡したあとが伝わってくることも、近年の応募作品の傾向でもあります。男性や年配の方の情緒的な作品が変わらずに多い中、今年は、若い方の、気持ちを吐き出すような、エネルギーにあふれる作品が、キラリと光りました。
毎年この時期に、時効になった「言えなかったアイラヴユー」や、現在進行形の想いをこの企画にのせてつぶやいていただける事は、ほんとうに嬉しいです。まだお互いが生きているうちに、その言葉が相手に届くよう願っています。
来年のラヴレターには、ぜひ「届かなかったラヴレターのその後」のハッピーエンドが、たくさんやってきますように。
今年も審査にご協力をいただきました審査員の先生、ならびに事務局のみなさま、そして、作品をお送りくださったみなさま、ありがとうございました。
株式会社キャリア・マム 堤香苗