届かなかったラヴレター
匿名
切ない気持ちや感謝の気持ち、大好きだったあの人への想い・・・毎年、大切な人への思いを綴ったラヴレターを募集している「届かなかったラヴレター」。これまでご応募いただいた「届かなかったラヴレター」をご紹介します。
これまで撮った多くの写真の中で、
君と2人きりで映っている写真は、
ハネムーンの写真を除くと、
たった1枚しかない。
近くの団地を背景に、
タイマーで撮った写真だ。
写真の中で、
君はこわばった笑顔を見せている。
僕は少しためらった後、
写真を切り裂いた。
思い出を形に残したくない。
新生活に余計な感傷を持ち込みたくなかった。
家具や電化製品は、
ほぼすべて新品に買い替えた。
冷蔵庫や洗濯機は1人暮らしには大き過ぎたし、
婚礼ダンスは邪魔以外の何物でもなかった。
その替わりに大きなデスクを買い、
リビングの真ん中に置いた。
PC台を横に置いて、
リビングはくつろぎの場から仕事場になった。
深夜、僕は号泣することがある。
君にしてしまったひどいこと、
してやれなかったことが、
頭の中にわっと押し寄せて来る。
すべて切り離したはずの新生活が、
表面上のことだったと、
不在の君が教えてくれるようだ。
今さら号泣する僕を、君は笑うだろうか。
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