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届かなかったラヴレター

大谷 信

切ない気持ちや感謝の気持ち、大好きだったあの人への想い・・・毎年、大切な人への思いを綴ったラヴレターを募集している「届かなかったラヴレター」。これまでご応募いただいた「届かなかったラヴレター」をご紹介します。


高校2年の秋だった。
朝、教室に入って来た担任の先生が
「大谷、これ預かって来たぞ」
と言って小さな封筒を渡してくれる。
彼女からの手紙である。
鉛筆書きの綺麗な文字だった。
先生と同方向から
自転車通学している彼女は、
追い抜きざま
「これ大谷に渡して下さい」
と言って言付けるのである。
こんな事をスマートに
やってのける勇気ある人だった。
テニスをやっていた。
白いフレアスカートがよく似合っていた。
卒業し、
私が都会に就職したため
交際は途切れたが、
翌年の春、
仕事から夜遅く下宿先に帰ると
彼女が来ていた。
突然の事だった。
彼女に比べて如何にも幼かった。
1年後に、
突然尋ねて来てくれた真意が
理解でき無かった。
つまり、
恋の何たるかも判らない
木偶の坊だったのである。
朝、目が覚めると
彼女の姿はもう無かった。
それっきりである。
それっきり半世紀が経ってしまった。

「届かなかったラヴレター」次回の募集についてはキャリア・マムサイトやメルマガでお知らせします。 過去の受賞作品はこちらでご覧いただけます。

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