• ようこそ ゲストさん
  1. HOME
  2. ライフスタイル
  3. 届かなかったラヴレター

届かなかったラヴレター

匿名

切ない気持ちや感謝の気持ち、大好きだったあの人への想い・・・毎年、大切な人への思いを綴ったラヴレターを募集している「届かなかったラヴレター」。これまでご応募いただいた「届かなかったラヴレター」をご紹介します。


高校生の頃文芸部に入っていた。
通学の時、
同じ田舎の駅で下車する
ろう学校の生徒たちがいた。
そのなかに大変可愛らしい女の子がいて、
時々目を合わせるが
ただ黙って見つめ合うだけだった。
一度階段を下りるとき、
彼女がハンカチを落とした。
真っ白い小さな花柄のハンカチだった。
私がそれを拾い彼女に渡すと、
彼女は私を見つめて
恥じらうように笑った。
その切ないような目が印象に残った。
彼女は口がきけなかったのだ。
卒業式の日、
私は紙片をポケットに忍ばせていた。
式を終えて、
白いフリージアの花束を抱いた彼女が
友達と話しながら駅にやってきた。
いつもの笑顔。私は胸が苦しくなった。
友達と一緒だから彼女に近づけない。
電車が入り彼女が乗車した。
電車の窓からあの時のように
彼女がじっと私を見ていた。
「一言もことばを交わさぬままありて、
 今日卒業の君が微笑む」
歌はポケットに仕舞われたままになった。

「届かなかったラヴレター」次回の募集についてはキャリア・マムサイトやメルマガでお知らせします。 過去の受賞作品はこちらでご覧いただけます。

«前のページへ届かなかったラヴレターTOPへ次のページへ»

ページの先頭へ

この記事が気に入ったら「応援する」ボタンをクリック

応援する