届かなかったラヴレター
2016年堤香苗賞~たむ さん
切ない気持ちや感謝の気持ち、大好きだったあの人への想い・・・毎年、大切な人への思いを綴ったラヴレターを募集している「届かなかったラヴレター」。これまでご応募いただいた「届かなかったラヴレター」をご紹介します。
「わ」で始まる苗字のあなた。
学年で最後の卒業証書を貰った後のお辞儀が美しくて、その赤い振袖姿が今でも目に焼き付いています。
その二時間後に町中を飲み込む大津波。暗闇の避難所であなたのことが心配で眠れませんでした。
あなたがお亡くなりになられたのを知ったのはその翌日のことです。
「緊急放送」があなたが見つかった場所を告げてから、私はあなたに会いたくなって自転車を走らせました。
その時、もうあなたは「死体安置所」という場所にいて、会うことができませんでした。
高校時代、私はあなたが見つかった場所に何度も足を運びました。
ひょっこりあなたが笑顔で声をかけてくれると思ったのです。
「卒業写真を撮り忘れたね」と、赤い振袖姿で。
あれから五年。僕は都内の大学生になりました。
二十歳になった今、私の中であなたに誓いたいことがあります。
それは、あなたの分まで未来を精一杯に生きること。
あなたは私にいのちの儚さと大切さを教えてくれました。
「届かなかったラヴレター」次回の募集についてはキャリア・マムサイトやメルマガでお知らせします。 過去の受賞作品はこちらでご覧いただけます。