デジタルまめ知識
誹謗中傷による罰則が強化されました
ありとあらゆる情報をインターネットで得られる時代になって久しいですが、個人の考えや意見もSNSなどの媒体を使って比較的自由に発信できるようになったことも画期的でした。
しかし同時に誹謗中傷によるトラブルも徐々にエスカレートし、社会問題として取り上げられることも多くなったため、法務省が「侮辱罪」の罰則を強化する事態にまで発展しています。
法務省のホームページによると、「侮辱罪は、事実を摘示せずに、『公然と人を侮辱した』ことが要件になっています。具体的には、事実を摘示せずに、不特定又は多数の人が認識できる状態で、他人に対する軽蔑の表示を行うと、侮辱罪の要件に当たることになります。」とあります。
つまり「根拠のない理由からむやみに人を侮辱してはならない」ということです。
「そりゃそうだろ......。」と感じる方も多いと思いますが、相手の顔が見えないインターネット上では、過激な言葉とともに相手を貶める書き込みが後を絶たないのが現実。そのため、今回侮辱罪の「法定刑」が引き上げられることとなったのです。
似たような罪でよく挙げられるのは名誉毀損罪ですが、こちらは「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」こと(法務省のホームページより)が要件となっています。
違いは「事実を摘示(=かいつまんで示す)するかしないか」というところですが、事実を摘示したところでその事実が真実かどうかは問われないため、「事実を摘示しようがしまいが、罪であることは同じ」なのです。
それなのに、今までの侮辱罪の法定刑は「30日未満の拘留、もしくは1万円未満の科料に処する」という、刑法の罪の中で最も軽いものでした。一方、名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」です。そこで、2022年7月の改正により「名誉毀損罪に準じたものに引き上げること(法務省のホームページより)となり、侮辱罪の法定刑は「1年以下の懲役若しくは禁固若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」となりました。
■罰則が強化された背景刑法の中でも最も軽い罰則だった「侮辱罪」の法定刑を強化せざるを得なくなった背景としては、やはりインターネットを外して考えることはできません。
一般の人に限らず有名人や社会的地位のある人などが、根拠や事実のないデマに悩まされたり、日々の生活を脅かされたりすることがあってはなりません。
侮辱罪の法定刑を強化することが「抑止力」になると期待しての今回の改正でしたが、その前にインターネットを利用する人々のモラルを問われていると考えたほうがよいでしょう。
・書き込む前にちょっと立ち止まれる心の余裕はありますか?
・その「意見」は、誰かを傷つける「凶器」になってはいませんか?
・自分がいま、相手に伝える言葉と同じことを言われても大丈夫ですか?
ある日突然被害者・加害者の両面になりかねない、実はとても怖いインターネット社会。トラブルなく、正しく上手に歩んでいきたいものですね。
参考:法務省ホームページ「侮辱罪の法定刑の引上げ Q&A」
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00194.html
【著者】
あきまつ
編集・ライター。一児の母。WEB制作周りに興味を持ったのは約20年前。日々進化する新しい技術とドタバタ子育てに悪戦苦闘しながら、おはようからおやすみまで暮らしを見つめています。