デジタルまめ知識
カスハラ(カスタマーハラスメント)を考える
近ごろ、各企業でカスハラ(カスタマーハラスメント)対策を講じる取り組みが増えています。自治体レベルでも企業の対策を支援すべく、東京都、群馬県、北海道が全国に先駆けて「カスタマーハラスメント防止条例」を施行し、ほかの自治体も追従しています。もはや深刻な社会問題となっている現状とカスタマー(顧客)側に問われる姿勢を、主にインターネット上でのトラブルをあげながら考えていきたいと思います。
SNSの匿名性を逆手に使った事例が増えています
カスハラは、顧客が従業員に対して理不尽な要求や暴言、過剰なクレームを繰り返す行為を指します。特にインターネット上では、顧客側が特定されにくいことをいいことに、過激な投稿がエスカレートする傾向が強く、カスハラによって時間を取られてしまい、仕事や業績に悪影響を及ぼす企業も増え、それぞれ対応に苦慮しています。
たとえば、「会社をつぶしてやる」「誠意を見せろ」などといった脅迫、企業や店、従業員を名指ししたうえで過剰なまでの低評価やレビュー、SNS上で特定の企業や店に対する誹謗中傷......など枚挙にいとまがありませんが、皆さんもどこかで目にした事例があるのではないでしょうか。または、残念ながら実際に経験した方もいるかもしれません。
雇用する側として従業員を守るには
こうした行為は、従業員の勤務環境を著しく悪化させ、精神的なダメージから「もう働けない」と退職に追い込まれる事例すらあるのです。特にサービス業の求人が慢性的に不足している中で、このようなハラスメント行為はさらに追い打ちをかけてしまいます。
「カスタマーハラスメント防止条例」は、カスハラが犯罪や労働問題につながる可能性があることを明記し、企業が従業員を守るための方針を明文化することを推奨しています。現時点では罰則規定はありませんが、企業が毅然とした対応をとることで、こうしたトラブルを未然に抑止しようというねらいがあります。
本当に苦情を言うべきときは「伝え方」を重視
なかには、何らかのサービスや提供に対し、本当に改善してほしいという意味で苦情や意見を述べたい場合もあることでしょう。そしてそのことが、企業の成長につながることもあります。顧客側は決して感情的にならず、相手の立場も配慮しながら、事実と要求を冷静に伝えることがとても大切です。
表現が過激になることで相手を貶したり、人格を否定するような言葉は相手への攻撃となり得ます。本来の問題解決も達成できないのでは本末転倒なので、「伝え方」が重要なカギとなります。
リアルでもネットでも企業でも個人でも
企業が従業員を「いわれのない、もしくは過剰な誹謗中傷から守る」という流れは、雇用問題や求人にも大きな影響を与えるほどの問題になりました。もしかしたら、攻撃の流れを作った側は問題提起をしたかっただけかもしれません。しかし、そこに足りないのはやはり「思いやり」。自分が伝えたいことを正確に表現できるコミュニケーションスキルがより一層求められていることを意識したいものです。
※文中で紹介しているのは、2024年7月現在の情報です。条例の内容が改正されることもありますのでご了承ください。
【著者】
あきまつ
編集・ライター。一児の母。WEB制作周りに興味を持ったのは約20年前。日々進化する新しい技術とドタバタ子育てに悪戦苦闘しながら、おはようからおやすみまで暮らしを見つめています。

